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コーチと保護者の双方向コミュニケーション[文献紹介]

「ユーススポーツにおけるコーチと保護者の関係を強める:調和を増進させ悩みを最小化させる」(Smoll, Cumming, Smith, 2011)の論文紹介の第3部で、話題は「双方向コミュニケーション」です。今回は、典型的な保護者の例がいくつか挙げられ、それに対してどのような言動をとっていくことが考えられるのかが示されています。自分だったらどうするだろうと考えながら読むと面白いと思います。


過去の記事へのリンクはこちらからどうぞ。


 

双方向コミュニケーション

 保護者は子どもが参加している全ての活動について問い合わせる権利と責任を有している。スポーツもその例外ではない。そのため、コーチは保護者の声に対してオープンでいるべきで、質問に対して喜んで答えていくべきである。コミュニケーションは2車線道路のようなものであることを覚えておかなくてはいけない。コーチがコミュニケーションのラインを開いておけば、保護者と建設的な関係を築ける可能性が高い。

 双方向コミュニケーションを促すことが、保護者がコーチに対して失礼な言動をしてよいということには繋がらない。むしろ、保護者が心から心配していることを、コーチに対する信頼とともに表明することを歓迎するという意味である。しかし、保護者とコーチがお互いに意見を述べるのに適した時間や場所がある。それは練習中や試合中ではないし、子どもたちのいる前でもない。コーチは保護者に対して、いつ、どこで話し合いをするのがよいのかを告げるべきである。

 コーチと保護者間に起こりえる対立の原因として最も多いのは、子どもの能力についての意見の相違である。この点に関して言えば、、パフォーマンス測定システムを用いることで、アスリートに価値あるフィードバックができるだけでなく、保護者に対しても子どものパフォーマンス評価に関する客観的な資料を提供することができるようになる。しかしながら、保護者が、コーチの行っていることに同意しないことは時々起こる。ここで重要なのが、コーチが守りの態勢にならないことである。コーチは保護者が言わなくてはならないことに対して耳を傾けるべきである。もしかすると、保護者が言っている提案がとても役に立つと思うかもしれない。彼らが同意しなかったとしても、コーチは少なくとも話に耳を傾け、彼らが発するメッセージを評価することはできる。保護者は最終決定権を持っていることと、全員を満足させられるコーチはいないということを認識するべきである。コーチがアスリートに要求すること以上のことをお願いすることはできない。つまり、彼らができる最高の仕事をし、向上に向けた道を探し続けることしかできないのだ。

 アスレティックディレクターやリーグオフィシャルが、コーチと保護者の関係をとりもつ媒介者として活動することが望ましい場合もある。第三者がいることで、対立の可能性や敵対心を和らげることにつながり、解決に向けたプロセスに貢献できる可能性がある。立ち位置や行動をサポートする文書を携帯しておくことも有効だ。制定しておいた保護者の行動規範、リーグやチームルール、規約、教育的教材などがそれだ。その目的は、行動がはっきりと分かる明確な解決法を探しだし双方で共有することにある。つまり、コーチ、保護者、あるいはアスリートがやるべき事、あるいはやるべきでない事が明確に行動として記述されていることが重要である。

 保護者と好ましい関係性を築く際、ほとんどの保護者が子どものことについて本当に情熱的で心から心配していることを理解するべきだ。しかし、保護者は自分達がどのようなトラブルを引き起こしているのかに単に気づいていないこともある。保護者に対して怒るよりも、コーチは保護者が問題を抱えていると認識すべきである。もしかすると、コーチがその問題を解く手助けができるかもしれない。やることは、これらの人々に対して、巧みに、外交的に、彼らの行動が与えているネガティブな影響について指摘し、彼らにより建設的で支援的になってもらえるようにすることである。“問題を起こす保護者”の典型的なタイプを以下に挙げた。彼らの特徴を描写するのに加え、これらの保護者に対応するための助言も書いている。


無関心な保護者

際立った特徴

 無関心な保護者の最も顕著な特徴は、子どもを動揺させるくらいにチームアクティビティに参加しないことだろう。

コーチがすべきこと

 コーチは、なぜ保護者が参加し貢献しないのかという理由を探すべきである。そして、彼らの関与を歓迎することを告げることだろう。実際にはとても興味を持っているのだが、妥当な理由(例えば仕事や病気など)によって、アクティビティに参加できていない保護者を不当に評価することを避けなくてはならない。スポーツの価値を説明し、子どもと保護者が一緒にできることを説明することで、保護者に対して子どもの活動に関して、新しい興味を持つように誘うことができるかもしれない。この場合、アスリートの支援も必要である。コーチらはアスリートを勇気づけ、人としての彼らにとても興味を持っていると示すべきである。


過度に批判的な保護者

際立った特徴

 過度に批判的な保護者は、頻繁に子どもを叱ったり、激しく非難したりする。このような保護者は子どものパフォーマンスに満足することはほとんどない。アスリートの試合というよりも“保護者の”試合という様相を示す。

コーチがすべきこと

 先に議論したように、自分の子どもの成功や失敗を自身の成功や失敗と無意識のうちに結びつけている者もいる。結果として、彼らは子どもにとても厳しくあたることが多い。コーチは、これらの過度に批判的な保護者に、この問題を巧妙に気づかせるような試みをしてみるべきだろう。一貫して批判をし続けることが子どものストレスや感情的動揺を引き起こしてしまい、結果としてそのイライラ感がパフォーマンス発揮にネガティブな影響を与えてしまうことがあると説明することもできる。保護者に対して、なぜ子どもを褒めたり勇気づけたりして動機づけを指導しているのかという理由を説明し、保護者がどのように一緒に同じ事をやっていけるか話すことも可能だろう。

コーチが言えること

 「ジョーンズさん、あなたがネイサンを支援しようとしているだけだということは分かります。しかし、彼を批判しているとき、彼はとてもナーバスになってプレーも良くなくなっています。そしてそこから何も楽しみを得ていないようです。」あるいは「ジョーンズさん、ネイサンは批判よりも称賛や励ましによりよい反応をすることを発見しました。そこまで批判をするのではなく、息子さんを勇気づけるようにしてみると、あなたたち両者にとってスポーツがもっと楽しいものになると思いますよ。なんと言っても、子どものゲームですから。楽しみたくてプレーしてますし、批判が多すぎてしまうと楽しめなくなってしまいます。」


ベンチの後ろから叫ぶ保護者

際立った特徴

 “革製の肺”を持ち、巨大な声帯を持っている保護者がいるようだ。彼らはだいたいベンチの真後ろに座り、コーチの鼓膜の健康を明らかな危険な状態に陥れるようにしている。彼らは頻繁に怒鳴り散らし、実質的に他の人がだれもそのエリアで話が出来なくしてしまう。コーチでさえも。誰もがその人の罵りの対象となる。それがチームメイトであろうが、対戦相手だろうが、コーチ、審判だろうが。

コーチがすべきこと

 コーチはわめき散らす保護者と口論をしてはならない。それは全く良い結果をもたらさず、むしろ、おそらく事を荒立ててしまう。試合の合間(ハーフタイムやピリオド間)に、コーチは落ち着いて、巧みに、そして他に誰もいない状況でその人に対して、そのように叫ぶことが、子どもに対して良くない例を示していると告げるようにする。コーチは他の人に協力してもらい、ゲーム中にこの人のことについて対応してもらえるようにしてもよい。また、コーチは破壊的保護者に、チームを支えるタスク(対戦相手のスカウティング、記録取り、用具管理等)を与えることも考えられる。大きな責任感を持たせることで、叫ぶ人に静かでいさせる手助けをすることが考えられる。もし叫び続けるようであれば、リーグの管理者からの支援をお願いするべきである。

コーチが言えること

 「興奮することは分かりますが、子どもたちがあそこで素晴らしい時間を過ごしています。このゲームをそんなに深刻に捉えないように心がけてもらえますか。」もしくは「すみませんが、ゲームが終わった後にちょっとお話ししませんか。そこで、コーチングについてあなたの考えを教えてもらえますか。ゲームの最中ではなくて、ゲームが終わってからそれを伺うことのほうが得策だと思います。子どもたちが混乱してしまいますので。」


サイドラインコーチ

際立った特徴

 サイドラインコーチだと思い込んでいる保護者は、しばしばベンチに身を乗り出してアスリートに提案をしてくる。

コーチがすべきこと

 ここでもまた、コーチはそのような保護者とすぐに対決すべきではない。コーチはアスリートに対して、練習中や試合中に誰がコーチであるかを話しておき、アスリートの注目を集めることができるようにしておく。他者からの指示に耳を傾けることは混乱の元である。コーチはその保護者に個別で話をし、複数の人が何をするかの指示を出していることがアスリート達を惑わせてしまうことを伝えるべきである。コーチはその保護者にフルタイムアシスタントコーチになるか、フルタイム観客になるかどちらかをお願いすることもできる。

コーチが言えること

 「スラビンさん、チームのためにあなたが心配してくれていること、情熱はとても有り難く思います。しかし、あなたがサイドラインからイズラをコーチングしているとき、彼女は混乱し、気が散っています。あなたが素晴らしいアイデアを持っていることは知っていますし、それを聞きたいと思っています。しかし、今ではなくゲームの後にお願いできますか。」


過保護な保護者

際立った特徴

 ほとんどの場合、過保護の保護者はアスリートの母親である。過保護の保護者は息子や娘がプレーしている最中にずっと不安そうであったり、不安なコメントをしていたりする。過保護な保護者はスポーツに内在する危険のために頻繁に子どもをその場から離そうとする。

コーチがすべきこと

 コーチは怪我の原因となるような恐れを取り除いてその保護者にその場が十分に安全な場であることを伝えて安心させるようにする。コーチは、アスリートを守るルールや用具について説明するようにする。コーチングの質、プログラムの管理、審判がスポーツの安全確保に役立っているのかを説明する。

コーチが言えること

 「スミスさん、アスリートが安全に試合ができるように最善を尽くしています。私は子どもたちのことを大切に思っていますし、彼らにとってこのスポーツが危険であれば、子どもたちのコーチングを行ってはいないということは知っておいていただきたいと思います。」あるいは「スミスさん、私はここにいる子どもたち、一人ひとりのことに気を配っていますし、一人として危険が及ぶと考えられることはさせません。」


 

 具体的な例として、無関心な保護者、過度に批判的な保護者、ベンチの後ろから叫ぶ保護者、サイドラインコーチ、過保護な保護者という5つのシチュエーションが出されていました。このような場面、日本にもあるなと思い、文化が変わっても起こってくる課題は類似しているということを確認できたように思います。コーチがしたり、言ったりする内容についても提案がありましたが、このような行動例、発言例のデータベースがあると、きっと参考になるだろうなと思いつつ、みていました。コーチングは文脈依存だという話を以前にもしたことがあると思いますが、ここに出ているものはあくまでも例であって、絶対的な解決策ではありません。それぞれの状況によって何が効果的かは変わってきますので注意が必要です。私が特に興味を持ったのが、コーチが言えることの中で共通して出てきていたことで、言い負かすのではなく、問題行動と捉えられることをしている人に対しても、その人の思いや言っていることを認め、そこから協調的なアプローチによって課題を解決しようとする態度でした。確かにこのほうが関係者みんながWINな状態ができあがるように思い、さっそく試してみようと思いました。

 次は「コーチと保護者のミーティング」についてお届けできるよう準備をします!お楽しみに。(伊藤雅充)■

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