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STB第1回「導入(授業概要の解説)」

 「技(ワザ)」を磨いていくためにはどのようなことを考えていけばよいのか、効率的なスキルアップの方法とはどのようなものなのかを考えていく授業、それがこのスポーツトレーニング論Bです。皆さんのほとんどはアスリートとして日々のトレーニングに励み、パフォーマンスアップに向けて心も体もワザも磨き続けていますね。この授業が皆さんの競技力向上に対する新しいアプローチ法を提供することになれば、とても嬉しく思います。また、この中には将来指導者としてのキャリアを考えている人も少なくないと思います。これから皆さんが上級生になっていき、練習をリードする立場になっていったとき、自分の競技力だけでなく、後輩達のスキルアップに対して、より良い支援ができるようになるでしょう。それがチーム全体の底上げに繋がり、自分自身の競技力向上にもポジティブな影響を与えてくれることでしょう。このような経験を通して、大学を卒業するころには、即戦力の指導者として羽ばたく準備ができていることと思います。

 まず、この授業の概要、そして到達目標を確認しておきましょう。

【授業科目の概要・到達目標】

 競技力向上を目指すもの、スポーツコーチングの質を高めようとするものにとって、学術的知見にもとづいた効果的なスキルアップの方法を理解し、それが実践できることは必須の能力であるといえる。本授業では、スポーツ心理学やスポーツ生理学、バイオメカニクスといった、スキルトレーニングの基盤となる学問領域の知識を融合させ、学融的立場から効果的なスキルトレーニングについて考えていくこととする。本授業を終えるとき、受講生は、

  1. 科学的根拠を示しつつ、効果的なスキルトレーニングのあり方を論理的に説明できる

  2. 科学的根拠にもとづいたスキルトレーニングのメニューを作成できる

  3. 科学的根拠にもとづいたスキルトレーニングメニューを運用していくためのコツに気づいている

ことが期待される。


 いかがでしょうか。日本体育大学の英語名はNippon Sport Science University、つまり科学的根拠にもとづいてスポーツを考えていく大学です。到達目標に「科学的根拠」が3回も出てきている理由が分かるでしょう。もちろん科学だけで競技に勝てるわけではありませんが、科学は間違いなく役に立ちます。一昔前であれば、科学にそっぽを向いても勝てたかもしれませんが、現在は世の中がそうはさせてくれません。この科学・技術の発達がめざましい中で、皆さんがスポーツパフォーマンスの領域で先頭を走り続けるためにも、この授業に真剣に取り組んでもらいたいと思います。

 もし、字面だけを追って、内容をそしゃくできていない人がいたら、もう一度、授業科目の概要と到達目標をしっかり黙読(音読でもよいですが)してください。毎回、授業の内容を理解しているかどうかを確かめること、そして出席確認をするために事後課題を行います。今日の課題には、間違いなく授業概要と到達目標は出てきます。よく読んで理解をしておいてください。

 では次に、授業方法のチェックをしましょう。

【授業方法】

  • コーチングは「知ること」に加え「できる」ことが重要となる。そのため、本来であれば、多くのケーススタディやグループディスカッションなど多くのアクティブ・ラーニングによる学習を取り入れて、スキルの獲得を目指すのだが、現在の状況を踏まえると、やや「知ること」のウェイトを高くした授業展開をとることになる。ただ、できる限りアクティビティを取り入れたやり方を採用するように努力する。

  • 基本的に対面で授業を行う。新型コロナウィルス感染症の感染拡大状況によっては、対面と非対面授業、ライブ遠隔とウェブテキスト、オンデマンド教材を効率的に組み合わせて授業展開する。いずれの場合も、Microsoft Teamsを使って資料の配付や課題の実施を行う。また、zoomを使うこともある。

  • 毎回、ウェブテキストを使って授業開始前までに自己ペースで事前学習を行う。ウェブテキストを使った事前学習を行ったあとに、理解度チェック課題を行うこと。課題の実施は当該授業の正規の開始時間から15分後(実際には14分59秒)までとする。授業では15分後からテキストの内容に関連するディスカッションなど各種アクティビティを行う。時間は45〜60分程度を予定している。その後、最後の15〜30分を使って次の時間の内容を簡単に解説する。その後の1週間で受講者は再度ウェブテキストの当該箇所を各自で学修し理解度チェック課題を行うというサイクルを繰り返す。

 少々複雑にみえるかもしれませんが、一度やってみると、それほど難しいことではないことが分かると思います。ただ、皆さんは他の授業も並行して受講していますので、授業毎のやり方の違いに戸惑うかもしれません。なにか教員に質問があれば、個人的なものはTeamsのチャット機能を使い、他の人にも関わることであればTeamsのチーム内で発言をしてください。

 また、授業テーマに関する映像の視聴をお願いすることがあります。ウェブテキスト内にYouTube動画などを貼り付けていたり、Microsoft StreamをTeams内で視聴してもらったりすることがあります。参考資料としても映像を紹介することがあります。接続環境によっては映像の視聴が極めて困難である場合もあると思いますので、映像については絶対的な教材という設定にはしません。あくまでも補助的な手段として捉えてください。

 それでは、授業で扱う内容についてみてみましょう。

【展開】

  1. スポーツトレーニング論Bの導入

  2. 効果的なスキルトレーニングとは

  3. 運動学習理論の概要

  4. 練習の種類

  5. 効果的なフィードバック 

  6. 非線形学習理論の概要

  7. 非線形学習理論の適用

  8. 非線形学習理論の実際(Game Sense)

  9. バイオメカニクス的考察(運動の法則)

  10. バイオメカニクス的考察(慣性モーメント、運動連鎖)

  11. バイオメカニクス的考察(内受容器)

  12. バイオメカニクス的考察(バネ的特性)

  13. スキル練習メニューの開発

  14. ​スキル練習メニューの改善

  15. ​スキル練習メニューのイノベーション


 ここに示した1〜15回の授業のうち、2〜7回は「学習」に関する理論的背景をもとにしてスキル向上について考えます。8〜11回の4回は3年次に授業が設定されているスポーツバイオメカニクスの基礎的な知識をつかってスキル向上を考えていきます。最後、12〜15回では、1〜11回で学んだことをフル活用して、効果的なスキル練習のメニューを作り、改善し、さらにこれまでになかった発想で練習メニューを革新していくことに挑戦します。

 次に成績評価についてみておきます。新しいシラバスでは、次のように設定します。

【成績の評価方法・基準内容】

  • 出席回数が全体の3分の2以上ない場合は成績評価の対象とならない。

  • 成績評価は各回の理解度チェック課題の評価(60%)、最終課題(レポート)の評価(40%)で行う。

 

 この授業は、テストをパスすることが目的ではなく、みなさんの競技力向上の実践をよりよいものにしていくことのために行います。授業内でも自分がこれまでに実施してきた練習を、新しく学んだ理論的背景を使って変化させていくことを行っていきますが、それ以外の時間でも、自分たちが行っている練習メニューをより効果的なものにしていけるように挑戦してもらいたいと思います。

【準備学習(予習復習の内容)】

 授業で学んだことを可能な範囲で実践し、「知る」から「できる」にむけて挑戦をすること。

【受講生に対するメッセージ】

 ここで学ぶ知識やスキルは、スポーツの実践や指導にとどまらず、学生生活においても役立てることができ、皆さんの人生をより豊かにしてくれる。担当教員はあくまでも受講生の皆さんの主体的な学びを支援するファシリテーターである。皆さん自身が自分の学びに責任を持ち、しっかりと学習していこう。

 学びの主体は皆さんです。私が教えるから皆さんが学ぶのではありません。私が教えても、皆さんが学んでいなければ、私は「教えた」とは言えません。自分自身の学びに責任をもって取り組みましょう。

 最後に参考文献を紹介しておきます。

【参考文献等】

  • Knudson and Morrison:監訳・阿江通良(2007)「体育・スポーツ指導のための動きの動質的分析入門 」 NAP ISBN: 9784931411678

  • 石井喜八・西山哲成(2011)「スポーツ動作学入門」 市村出版 ISBN: 9784469268195(Amazonへのリンクはここ

 それではこれからよろしくお願いします。

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