

教わりたいコーチと教わりたくないコーチ像
日本スポーツ協会のスポーツコーチングリーダー(SCL、共通科目Ⅰ)講習会の講師をすることが年に何度かあります。1日の対面講習(事前・事後学習があるため、講習自体が1日で終わるわけではありません)の中で、受講者がたくさん自分の意見を語り、他の受講者の声に耳を傾け、手を動かし、体を動かし、頭を働かせます。そこに講師である私も加わり、楽しく講習を進めています。 この講習の後半部分で、これまでの学びをもとにグループで「教わりたいグッドコーチ像と教わりたくないコーチ像」を見える化してもらっています。基本、お絵描きするのですが、大人になってからの真剣なお絵描き、なかなかの見ものです。 そして先日、とても興味深い絵を描いてくださったグループがありましたので、それを紹介させて頂こうと思います。 どちらがどっちか判別つくでしょうか。特に文字がないので想像するしかありませんね。 左側が「教わりたいコーチ」、右側が「教わりたくないコーチ」です。 左側の「教わりたいコーチ」では中央にある植物がアスリートとのこと。コーチは土や水、太陽のような、アスリートが自分の花を咲かせ

伊藤雅充
2025年12月15日読了時間: 2分


Application Scienceとしてのコーチング学
コーチング学とは何をする学問なのか? 日本体育大学で大学院のコーチング学系を設置した際、国内外の多くの専門家と議論を重ねました。そこで得た感覚は、今もなお私の中に強く残っています。私はコーチング学を「コーチング実践に直接関わる学問」として捉えています。かつて私が取り組んでいたバイオメカニクスや運動生理学、トレーニング科学は、広義のコーチング学に含まれる重要な分野であるものの、それ自体がコーチング学ではありません。コーチングに“役立つ”学問であっても、コーチング学“そのもの”とは異なる。私はそう考えています。 今回は、その考え方が形成される上で重要な影響を与えた経験について紹介します。 イギリス訪問で得た気づき 日本体育大学は平成23〜25年度に「文部科学省大学スポーツ研究活動資源活用事業」を受託し、体育教師およびコーチの専門能力向上に関する研究を行う機会を得ました。特にコーチング能力に関する部分は「コーチ実践指導力の向上プログラム開発」というテーマで調査・研究を進めました。 その一環として、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、ニュ

伊藤雅充
2025年11月24日読了時間: 5分


日本のハイパフォーマンス・パラコーチ育成の現状と課題(世界コーチ会議でのプレゼン)
2025年11月20日からギリシャ・アテネで国際コーチングエクセレンス評議会主催の世界コーチ会議が開催されており、その中でハイパフォーマンスコーチの育成についてのセッションが行われました。このセッション、通常の参加者にも公開されておらず、ノミネートされた15か国程度の代表者だけが集まって、お互いの取り組みを紹介し合いました。私(伊藤)もパラコーチ育成についての現状を日本大学の橋口先生、伊佐野先生とともに情報提供してきました。 私たちの資料タイトルは「Supporting High Performance Para Coaches' learning: Examples from Japan」でした。内容は以下のようなものでした。 日本のパラスポーツにおけるコーチ育成は、長年にわたってボランティアや福祉的支援を基盤に発展してきたため、競技力向上のための専門的コーチングが十分に体系化されていないことが課題となっています。多くのコーチは、家族・教師・学生ボランティアなど“支援者”としてスポーツに関わり始めるため、パフォーマンスコーチングの基礎を学ばない

伊藤雅充
2025年11月22日読了時間: 4分


「実力が出せなかった」—それが実力
試合や大会のあとによく耳にします。 「今日は実力が出せませんでした。」 でも、私はこう思うのです。 「実力を出せなかった」——それが実力です。 厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、運動学習の側面から見れば自然なことです。おそらくは「普段のトレーニングではもっと上手くできているのに」という思いから、そのように言っているのだろうと予想します。このような場合、一度、実力とは何か?を考えてみる必要があると思います。そして、普段のトレーニングの仕方を見直してみる必要があると思います。 指導者もアスリートも、トレーニングでできれば試合でもできるはずと思っているかもしれません。ただ、それは試合とトレーニングがしっかりとつながっている場合にのみ当てはまることです。言い換えれば、 オーセンティック(正統性、本物さ)なトレーニング ができているのか否か。ここがズレていれば、試合の場面で、トレーニングでのパフォーマンスが発揮できなくても当然です。 また、パフォーマンスは 変動 するもの、あるいは 平均回帰 するという性質を理解できているかどうかも重要な観点です。よ

伊藤雅充
2025年11月20日読了時間: 3分


勝負は勝たなければ意味がない?
今朝、電車の中で、ある広告に著名なアスリートの顔写真とともに「勝負は勝たなければ意味がない。そんなことは当たり前だ。でも、ただ勝てばいいのだろうか。相手を傷つけない…」と書かれているのを見かけました。 どういう意味で「勝たなければ意味がない」と言っているのかと疑問に思いました。本人の言葉なのかも分かりませんが、アスリートが時折口にする「勝たなければ意味がない」というのに、いつも首を傾げてしまう私なので、今朝も「ん?」と思ったのでした。私自身は、勝負に挑戦すること自体に意味があると思っています。結果はあくまでも副産物。 ただし、勝負の結果はどうでもよいとは思っていません。私も勝ちたくてたまりません。負けるのはいやです。 「勝たなければ意味がない」という時の「意味」とは何なのでしょうか? 「勝つ」ことによって得るものは何で、その意味とは? その何かを得られなかった場合に失うものとは? たとえば、プロ選手が勝たなければ収入がゼロになる、解雇される、といったような場合があるならば、収入を得るためには勝たなければ意味がないとかいうのであれば、ある程度は理解

伊藤雅充
2025年11月16日読了時間: 2分


「してあげる」と「任せる」のあいだで
皆さん、こんにちは。伊藤です。 先日、岡山県津山市で研修会の講師を務めさせていただきました。この研修会、同じ場に子ども・保護者・指導者が集まり、お互いに語り合うというユニークなスタイルをとってみました。さまざまな研修を担当させていただいていますが、一つの空間に三者が揃う研修は珍しく、私自身、これが上手くいくのか?という疑問も持ちながら、同時に私自身のスキルを伸ばすチャンス!と思いながら「学びの実験」をしてみました。 この研修に際して、とても興味深い質問を頂きました。それは、 親は、子どもにどこまで「してあげる」べきなのか? というものです。子育て、教育、スポーツの現場で多くの方が悩まれている課題だろうと思います。私自身親として、指導者として、教員として、同じような悩みをいつも抱えてきました。この問いに対して、その場でどのような話し合いがされたのか、私がどのようにその場で考えたのかをまとめてみたいと思います。 子どもたちの声を“待つ” 「親はどこまでしてあげるのがいいのか」。事前アンケートで、ある保護者から寄せられた質問を、そのまま子

伊藤雅充
2025年11月7日読了時間: 6分


インクルーシブな考え方が普通である未来を創る
「パラスポーツでは、まず障害に目がいってしまいがちです。Tokyo 2020は、パラスポーツ選手が固定概念を越え、真に一流のアスリートであることを教えてくれました。私たちは、このようなインクルーシブな考え方が「普通」である未来を創っているのです。 東京大会では、6か国が新たにパラリンピックに参加することができました。 スポーツは、競技だけではなく、生き様なのです。 コーチングとは、アスリートのニーズを知ることから始まります。彼らが自分の未来を自分のものにできるように。 次の世代のために、今こそインクルーシブな考え方をしていきましょう。」 この映像は、スポーツ庁委託事業「戦略的二国間国際貢献事業パラ参加国最大化事業」を経て政府広報として作成されたものです。この事業を通して、多くの出会いを得ることができました。人と人とのつながりが財産です。

伊藤雅充
2022年2月10日読了時間: 1分


NEPPプログラムの成果が日本政府広報誌『KIZUNA』に掲載
こんにちは。伊藤雅充です。 私たちのチームで受託していたスポーツ庁委託事業戦略的二国間スポーツ国際貢献事業パラ参加国最大化事業(日体大での愛称:NEPP)の成果が政府広報紙『KIZUNA』に掲載されました。リンクを貼っておきますので、是非ご一読頂ければ幸いです。 https://www.japan.go.jp/kizuna/2021/10/first_paralympic_appearance.html 簡単に要約も掲載しておきます。 要約:東京 2020 パラリンピック初出場の舞台裏 東京 2020 パラリンピックには世界中から 162 の代表団が参加した。そのうち、 6か国 が本大会に初出場した。 その内の多くは、 日本体育大学(Nippon Sport Science University:NSSU) が支援した国だった。日本の大学が、発展途上国や委託先国のパラアスリート/関係者を支援した事例である。 たとえば、パラグアイ初のパラリンピアンである ロドリゴ・ヘルモサ は、50m 自由形 S9 クラスで 29.72 秒を記録。30秒の壁

伊藤雅充
2021年10月22日読了時間: 2分


【翻訳】性差別発言に対するIWG、WSI、IAPESGWの声明
この記事は2021年2月11日に掲載された英文記事を翻訳したものです。原文は以下のリンクからご参照ください。 https://iwgwomenandsport.org/statement-iwg-wsi-iapesgw-respond-to-sexist-comments/ 世界の女性スポーツ擁護団体が東京2020組織委員会会長・森喜朗氏の性差別的発言に関して =========================================== 合同声明(2021年2月11日) 女性とスポーツに関する国際ワーキンググループ(IWG) ウィメンスポーツ・インターナショナル(WSI) 国際女性体育スポーツ協会(IAPESGW) =========================================== 女性とスポーツに関する国際ワーキンググループ(IWG)、ウィメンスポーツ・インターナショナル(WSI)、国際女子体育スポーツ協会(IAPESGW)は、東京2020組織委員会(TOCOG)会長の森喜朗氏による、スポーツのリーダーシップにお

伊藤雅充
2021年2月11日読了時間: 3分


井戸端会議(効果的なコーチングに必要なコーチの知識)
井戸端会議開催経緯 ここ最近、何回かオンラインでワークショップをやってみて思ったことに、参加者の方がまだzoomなどオンラインシステムに慣れておらず、意見交換の枠組みをはっきり決めすぎてしまうと、枠組みの理解に時間がかかってしまい、一番盛り上がりたい会話が弾まないという経験をしました。もっと、自由に意見を発することができないと、面白いと思えないかもしれませんし、学びが少ないと思うかもしれないと考え、思いついたのが枠組みのない井戸端会議をやってみようということでした。思いついたらやってみないと、ということで急遽数日で参加者を募り、 2020年3月20日14時から1時間、「スローなオンラインコーチング井戸端会議」と称して、 zoomを使って1時間だけのんびり話をしてみました。 フリーと言っても、何でもありにしてしまうと、それこそ何の学びもない場になってしまう危険性も考えられたため、一応の枠として、以前に公開していた効果的なコーチングに必要なコーチの知識ビデオをネタとして設定しました。 10名の枠に対して、6名の指導者の方々が参加してくださり

伊藤雅充
2020年4月2日読了時間: 5分
